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【試斬台】釘を使わず、精神を組む|檜と井桁接ぎの木組み

【試斬台】釘を使わず、精神を組む|檜と井桁接ぎの木組み

釘を使わず、精神を組む
― 井桁接ぎで組み上げた、檜の試斬台 ―

千夜賀風の活動の場には、既製品はほとんど存在しません。
それは、文化体験の場だけでなく、日々の稽古や、神社仏閣で奉納演武を行う場においても同じです。

そこで使われる道具は、ただ役目を果たせばよいものではありません。
何を大切にし、どのような姿勢でその場に立つのか。
道具にもまた、その考えが表れると私たちは考えています。
千夜賀風で使用する試斬台も、すべて自分たちの手で作っています。

既製品を選ぶのではなく、素材に触れ、構造を考え、実際に使う場面を思い浮かべながら、一台ずつ形にしてきました。
効率や量産とは異なるところにある、手仕事による試斬台です。

千夜賀風 試斬台

釘を使わない、井桁接ぎの構造

千夜賀風の試斬台は、釘やボルトなどの金物を使わず、日本の伝統的な木組きぐみ工法である井桁接いげたつぎ」によって組み上げています。
素材には、ひのきを用いています。

井桁(いげた)」とは、かつて井戸の上に設けられていた木枠の形に由来する言葉です。
四本の材を縦横に組み、「井」の字のような形をつくることから、井桁と呼ばれるようになりました。
互いに直角に組まれた材が支え合い、力を一か所に集中させることなく、全体で受け止める。
この構造は、日本建築の木組みにも古くから用いられてきました。
木と木を削り、噛み合わせ、釘を使わずに形を保つ。
そこでは、一つの材だけが強さを担うのではなく、それぞれが支え合うことで、全体の安定が生まれます。

試斬においても、力だけで刀を振るうことはありません。
呼吸を整え、姿勢を定め、自分の内側にある迷いや力みと向き合う。
井桁接ぎの構造には、そうした試斬の在り方にも通じるものがあります。

千夜賀風 試斬台

道具は、精神を映す

かつて武士にとって、道具は単なる機能品ではありませんでした。
何を持つかだけではなく、それをどのように扱い、どのように手入れし、どのような心で向き合うかが大切にされていました。
この試斬台も、完成したときが終わりではありません。
刀を受け、手で触れられ、幾度も稽古を重ねることで、木肌には少しずつ時間が刻まれていきます。
新しい檜の色や香りは、使うほどに落ち着きを増し、その場の風景に馴染んでいく。
人が道具を育て、同時に道具によって人も育てられる。その積み重ねによって、試斬台は初めて、その場に欠かせない存在になっていきます。

斬るためだけの台ではない

試斬台は、巻藁を立てるためだけの道具ではありません。
刀を抜く前に呼吸を整え、自らの姿勢を確かめ、心を定める。
試斬台の前に立った時点から、すでに稽古は始まっています。
刀を振るう一瞬だけではなく、その前にある静けさも含めて、試斬という一つの時間です。
だからこそ、試斬台もまた、刃を受け止めるだけでなく、人が自分自身と向き合うための道具でなければならないと考えています。

千夜賀風 試斬台

旧きに倣い、今に還る

千夜賀風が目指しているのは、かつての形式をそのまま再現することではありません。
また、目新しい演出によって、古いものを飾り直すことでもありません。
長い時間の中で受け継がれてきた技や考え方に倣い、そこに込められた精神を、今を生きる私たちの身体と時間の中に還していく。
井桁接ぎで組まれた檜の試斬台も、そのために生まれました。
釘を使わず、木と木を組む。
力に頼らず、全体で支える。
その静かな構造は、試斬に向き合う私たちの姿勢を、言葉以上に表しています。
千夜賀風の場に立たれた際には、刀が振るわれる瞬間だけでなく、その前に流れる静かな時間にも、ぜひ心を向けてみてください。
体験は、刀を抜くよりも前から始まっています。

千夜賀風 試斬台

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