『千夜賀風薪能』 主催・開催のお知らせ ― 阿佐ヶ谷神明宮にて、心を澄ます伝統の夜 ―

2025年9月28日(日)、阿佐ヶ谷神明宮にて、千夜賀風の名を冠した初の「千夜賀風薪能」を主催・開催いたします。
かつて庶民のあいだでも親しまれ、暮らしに寄り添っていた能の姿を、もう一度この時代に。
県や市が主催する格式高い公演ではなく、民間の手で、本物の能舞台をより身近に、日常に還していくこと。
それが私たち千夜賀風の願いであり、この薪能はその試みのひとつです。
観世流能楽師・武田宗典先生をお迎えし、炎の揺らめきとともに舞われる幽玄の世界は、年齢や背景を問わず、誰の心にも深く響く“原体験”となることでしょう。
静謐な神域の中で、日本文化の豊かさと美しさに、そっとふれていただける一夜。
どうぞ、気軽にお立ち寄りください。
日時 | 2025年9月28日(日)14:00(開場)~20:00頃(終演予定) |
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会場 | 阿佐ヶ谷神明宮 境内(東京都杉並区阿佐谷北1-25-5) ※雨天時、中止の場合はチケット販売サイトにてお知らせ致します。 |
鑑賞料 | 特別席(大人) 12,000円 ※正面前方席確約・グッズ・撮影特典付指定席(一般) 7,000円自由席(一般) 5,000円小・中学生 1,000円 |
チケット販売窓口 | 武田宗典ホームページ内、チケット販売窓口
以下の手順でお申込み下さい |
主催 | 千夜賀風 武田宗典 |
チケットお問合せ | munenori.noh@gmail.com |
お問合せ | 千夜賀風 contact@senya-gafu.com |
目次
千夜賀風と薪能プロジェクト
千夜賀風は、日本刀や武士文化を軸に、神社仏閣などの聖なる空間での体験型文化事業を展開しています。地域に宿る歴史や物語、そして武士が育んできた「品格」や「精神性」への深い敬意を大切にしながら、次世代へと文化を紡いでいくことを使命としています。
「薪能プロジェクト」は、こうした理念のもとに生まれました。
能楽がもつ精神性や芸術性を、五感を通して味わえる文化空間として再構築し、特に次代を担う子どもたちに、日本文化の“原体験”を届けることを目指しています。
本プロジェクトの根幹にあるのは、「鎮魂」と「伝統の継承」です。
神仏の気配が満ちる神社仏閣の野外空間で、薪の炎とともに奉じられる舞は、古来より精神性と象徴性をあわせ持つ神聖な営みとされてきました。
能楽は、足利将軍家をはじめとする武士階級によって育まれ、650年の歳月を経て今日まで受け継がれてきた、日本の精神文化の結晶です。
なかでも「薪能」は、夜の静寂と炎のゆらめきの中で舞われることで、魂に語りかけるような深い体験を生み出し、芸術と祈りが交差する“精神文化の舞台”として、その意義を深めてきました。
千夜賀風薪能では、こうした伝統の深みに現代の感性を重ね合わせ、単なる舞台公演にとどまらない、「内省」と「再生」の文化空間を創出してまいります。
阿佐ヶ谷神明宮の歴史と、薪能の舞台
阿佐ヶ谷神明宮は、旧阿佐ヶ谷村(現在の東京都杉並区阿佐谷北および阿佐谷南の一部)の鎮守として、天照大御神を主祭神に、古事記における三貴子—月読尊、須佐之男尊を祀る神社です。
『江戸名所図絵』(天保7年・1836年)によれば、日本武尊が東征の帰途、阿佐谷の地で休息し、その武功を慕った村人たちが、旧社地(現在の阿佐谷北5丁目付近、お伊勢の森)に社を創建したのが起源と伝えられています。
さらに、建久年間(1190~1198年)には土豪・横井兵部(または横川兵部)が伊勢神宮参拝の際に神示を受け、豊受大神宮外宮の禊川である宮川の霊石を持ち帰り、神明宮に安置したとされます。この霊石は、今も御神体として御本殿の奥深くに鎮まっています。
江戸時代には庶民からの篤い信仰を集めており、文政11年(1828年)には、当時の内藤新宿・中下町(現在の「新宿通り」沿い一帯)に所在する旅籠屋や茶屋の営業者たちが、共同で奉納したことを示す「内藤新宿 仲下旅籠中 仲下茶屋中」の銘が刻まれた、銅製の三本御幣が奉納されました。これらは、阿佐ヶ谷神明宮が当時いかに多くの人々に信仰されていたかを今に伝えています。
薪能プログラム
14時00分:清談茶会 出演:忌部 孔人
茶人・自然農藝家。
流派や形式にとらわれず、自然や季節の移ろい、不完全さを尊びながら、茶の湯に込められた思いと美しさを表現。産土の恵みとともに、麻や真菰、在来茶などを育て、神事や日常に寄り添う手仕事を大切にしている。
紹介制の瞑想指導でも知られ、多くのプロフェッショナルから信頼を集める。薪能に寄せる清談茶会では、深い静けさと感覚の目覚めを届けるひとときを紡ぎ出す。
16時40分:四方祓いの儀(薙刀・日本刀×能の謡) 出演:千夜賀風
武士文化を軸に日本伝統の精神性を今に活かす千夜賀風。
居合・抜刀・薙刀の演武と能の謡が響き合う祓いの儀式は、神仏の気配が満ちる境内にて天地四方を清め祓い、舞台に臨む精神の結界を築く神聖な幕開け。
“旧きに倣い、今に還る”という理念のもと、武士の美徳と気高き気配を再現する。
17時30分:墨ライブペイント『阿吽の龍』出演:阿部 朱華羅
墨絵師・ライブアーティスト。
自然と宇宙、魂と美を表現する阿部朱華羅が、祷りの舞を伴って墨で描き出す『阿吽の龍』。
ルーブル美術館やサルバドール・ダリ美術館でも称賛された独自の世界観が、能舞台を“今ここ”の神秘と一体化させる。
国内外で活躍する墨絵師による一夜限りの神秘的な墨絵儀式。
17時45分:墨絵 × 能 × 茶『月天茶会図』 出演:阿部朱華羅 × 武田宗典 × 忌部孔人
伝統と創造の交差点。
神前にて舞と筆と一服が響き合う即興の共演。
・墨絵:阿部朱華羅が舞い描く墨の月
・能:武田宗典による謡と舞の気配
・茶:忌部孔人の点てる月下の一服
それぞれの表現が重なり、幽玄の時空を創出する千夜賀風ならではの試み。
18時00分:薩摩琵琶『敦盛』出演:馬場 一嘉
鶴田流薩摩琵琶奏者・俳優。
祖父・馬場鶴洲の流れを継ぎ、古典弾き語りの世界に深く向き合う。
『敦盛』は、若き武将・平敦盛の最期とその美しき死を語る琵琶の名曲。
語りと音に宿る死生観と、薪の炎が照らす命のゆらめきが呼応する一幕。
18時40分:仕舞・狂言・薪能
仕舞「高砂」「経正」|狂言「仏師」|薪能「巴」
出演:武田 宗典(観世流能楽師) ほか
日が沈み、炎が灯る頃、いよいよ能の世界が幕を開けます。
まずは、能のエッセンスを凝縮した舞「仕舞」と、古くから親しまれてきた笑いの芸術「狂言」をお楽しみいただきます。
そして、夜の静寂に包まれた神域にて、観世流の本格能「巴」が上演されます。
『巴』は、源平合戦に散った女武者・巴御前の魂が現れ、かつての戦いの記憶と哀しみを舞う、勇ましくも切ない物語。
炎のゆらめきの中に浮かび上がる幽玄の世界を、どうぞ心静かにご覧ください。