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文化という風を纏う。— 千夜賀風が贈る企業向け抜刀体験

文化という風を纏う。— 千夜賀風が贈る企業向け抜刀体験

千夜賀風 和文化体験プログラム事例

東福門院(徳川和子)

企業向け居合・抜刀・試し斬り体験記 2025年 睦月・如月

千夜賀風では、個人向けの抜刀体験にとどまらず、企業や団体の想いやコンセプトに寄り添った特別な体験を企画、ご提供しています。研修やチームビルディング(team building)、ネットワーキング(networking)の場としても、一服の静けさとともに心に残る時間をお届けしています。
このたび、世界的に活躍する外資系グローバルコンサルティングファームの皆さまをお迎えし、千夜賀風では、2025年1月から2月にかけて数日にわたり、簗田寺にて特別な居合・抜刀体験の時間をご一緒いたしました。多様な視座をもつ皆さまにとって、“刀を抜く”という静かで奥深い体験が、日本文化との新たな出会いとなったことを願っています。

寛永文化を華やかに彩った皇后・東福門院の御霊が宿るとされる簗田寺。深い静寂の中、そのひとときはゆるやかに幕を開けました。簗田寺は、平安時代に平将門の乱で戦没した人々を弔うために建立された東香堂を起源とし、約1100年の歴史を紡いできた古刹です。時代ごとの役割や宗派の変遷を経ても、人々の祈りを受けとめ続けてきたその空間には、静かで穏やかな時間が流れています。
この寺院には、徳川家康の孫娘・東福門院(徳川和子)のご位牌が今も大切に祀られています。彼女は若くして京都御所に嫁ぎ、幕府と朝廷を結ぶ存在として日本文化の再興に尽力しました。
その気品と教養がもたらした華麗な寛永文化は、今も私たちの美意識に深く息づいています。

千夜賀風 簗田寺
千夜賀風 簗田寺
千夜賀風 簗田寺

体験の冒頭では、いきなり刀を手にするのではなく、まず「なぜ日本刀が武士の魂とされてきたのか」にふれていきます。
日本刀は、単なる武器ではありません。武士にとってそれは命を託すものであり、己を護る神聖な護符でもありました。
刀の説明では、体験者の皆さまの興味や問いに応じて、日本刀にまつわることわざや言い回し、かつての人々の所作や美意識に関するエピソードも交えながら、静かに語りを深めていきます。そうしたやりとりを通じて、日本刀がかつていかに生活に根ざしていたか、そしてその感覚が今も私たちの言葉や身体感覚のなかに、静かに息づいていることを感じていただけたことと思います。
そのうえで実際に刀を手に取ったときの緊張感と、心がふと静まるような感覚は、体験をより深いものにしてくれます。

千夜賀風 刀剣説明
千夜賀風 刀剣説明
千夜賀風 刀剣説明

また、体験では着物と袴もご着用いただきました。
現代では少し敷居が高く感じられる着物ですが、その一つひとつには意味があり、粋なおしゃれ心が込められています。

着物の袖を通し、衿を整えるときの布の柔らかさ、袴に足を通すときの張りのある質感、
そして腰板が背にぴたりと当たるその瞬間――
何気ない動作のなかに、ふと背筋が伸び、意識が整う感覚があります。
装いを通して、自らの立ち姿が変わっていく。
そうした繊細な気づきが、日本文化を“まとう”ことの力なのかもしれません。

草履で一歩踏み出すその瞬間から、心はすでに静かに研ぎ澄まされ、
やがて向き合う刀の世界へと、静かに歩を進めていきます。
身に纏った感覚そのものが、自分自身の感性と静かに響き合いながら、心を整えていくのです。

千夜賀風 着物・袴
千夜賀風 着物・袴
千夜賀風 着物・袴

装いを整え、心と呼吸を静かに澄ませながら、次に取り組んでいただいたのは、居合刀を用いた所作と素振り。
刀を扱う身体の動きに静かに向き合っていただきました。
抜き、振り、納める――一つひとつの動きには、意味があり、流れがあり、美しさがあります。
呼吸とともに動きを重ねるうちに、姿勢や所作が自然と整い、空気に凛とした静けさが漂っていきます。

その流れの中で、やがて実際に真剣を手にし、巻藁(まきわら)を斬る場面へと移っていきました。
畳を巻いた巻藁を斬るという行為には、刀の重さ、刃筋の通り、そして心の静けさまでもが映し出されます。
静かに息を整え、意識を一点に結び、手から伝わる感覚とともに刀をふるう。
斬り落とす音、わずかに残る振動――その瞬間のすべてが、深く記憶に刻まれていきます。

千夜賀風 試し斬り
千夜賀風 試し斬り
千夜賀風 試し斬り

体験はマニュアル通りの流れではなく、その場で生まれる質問や興味に応じて日本文化のお話を広げていくのも特徴のひとつです。
日本刀の話から美意識のこと、武士の精神性から衣服の意味まで。参加者の関心によって、内容は少しずつ姿を変えていきます。
今回の体験は、午前と午後の二部構成で実施され、それぞれのチームに合わせて内容を柔軟に展開しました。
その場で生まれた問いや関心に応じて、日本刀の話、美意識、武士の精神性、衣服に込められた意味まで、語りの糸は自在に広がっていきます。

体験後には、静謐な森と湧水に囲まれた焙煎所・CONZEN COFFEEの珈琲と、arohaponoによる優しい甘さのオリジナルクッキーをご用意。チームごとに異なる話題を持ち寄る場となり、「そちらではそんな話があったのですね」と自然と会話がはずむような、余白ある仕掛けも大切にしています。

CONZEN COFFEE
CONZEN COFFEE
arohapono

簗田寺の寺紋「丸に結双葉葵紋」には、人と人の絆、思いやり、調和の心が込められています。
その精神にふれるように、体験後には自然と穏やかな会話が生まれ、笑顔が交わされていきました。

千夜賀風では、文化がめぐりゆくことを大切にしています。
日本の精神文化は、ただ古を懐かしむものではなく、自らの今と重なり合い、やがてまた未来へとめぐってゆくもの。
武士の居合や抜刀という体験を通して、武人としての厳しさだけでなく、教養と美を携えて生きた一人の人間としての物語をお届けしています。
それはきっと、日々の営みに新たな風をもたらすひとときとなることでしょう。

千年前、誰かの身体を駆け抜けた風は、めぐりめぐって今、あなたのもとへ――。

この体験が、文化と出会い、自分と出会い、そして誰かへと渡ってゆく“めぐり”となりますように。

簗田寺には、禅文化にふれることのできる宿坊「泰全」や、季節を味わう精進料理「ときとそら」も併設されています。
日常から一歩離れ、静かな時を過ごす場所として、多くの方に親しまれています。

千夜賀風は、これからもこの地の記憶と文化の息づかいを大切にしながら、心に残るひとときをお届けしてまいります。
どうぞまた、新たな出会いとめぐりの場として、簗田寺を訪れてみてください。

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